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From Penal Colony / Ryoma Maeda


music by Ryoma Maeda
lyrics by Ryoji Imanishi
voice by Showanomirai

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「流刑地より愛をこめて」

十姉妹の口笛が、まじりっけなしの西の空へ沈んで行く。
それはシュウマツの赤いシチュエーション。
アルカイックな宇宙遊泳。瞼裏の淡いハレーション。

その日、空から子供たちが落ちてきた。
3月35日の午前100時、流刑地より愛をこめて。

足首まで髪を伸ばした女の子のくれた果物は、
齧るとマンドリンみたいな音がした。
曲線形の自転車に跨って、
前カゴに押し殺した不安を詰め込んで、
目眩の坂道、下へ下へ下ってく。

その日、初めて人が宙に浮いた。
2100年100月100日、流刑地より、愛をこめて。

東京、五反田、武装したヘリが旋回、
百万回唱えたあの呪文が、
今では死んだ老婆の口の端に泡となって固まってる。
もう1000年、雨が降ってない。
東京は膝まで砂に埋まってる。
まるでロバみたいだ。
電話線を繋げると、からーん、と鐘の音がする。
どこか遠い過去の遠い異国の黄昏時と、混線している。

旗がはためく、
風もないのに。
潮が匂う、
海もないのに。

五時間目の授業の途中。
まどろみの中から顔を上げると、
教室が静まり返ってる。
しんと、みんな、天井を見てる。

その日、初めて、クラスメートが宙に浮いた。
タブチ君が16センチ、宙に浮いて唄ってる。
鼻歌を。
真っ赤な鼻歌を。
2100年100月100日、流刑地より愛をこめて。

遠くで、鐘の音がした。
からーん。

どんな刺激を受けても、
決して鳴かない鳥がいた。
その鳥は、今、どこか遠くの地下室で、
僕らのことを憂いている。
黄昏時、東京、五反田の上空では、
武装したヘリのスピーカーから、
砂が零れてた。

全部、砂になる。
エントロピーが羽根を広げて。

心臓のない101人の子供たちが、
1000メートル四方の病室に、
折り目正しく並べられたベッドの上に、
規則正しく眠っている。
みんな同じ夢を見てる。
夢を見ながら、少しずつ体が浮いている。
そして足りない、その101個の心臓の代わりに、
からーん、
鐘が鳴る。
101回、鐘が鳴る。
流刑地より、流刑地より愛をこめて。

2100年、8月88日、
1人の女の子が行方をくらました。
誘拐されたんだ。
暴力団の父親に関する抗争に巻き込まれて。
身代金は1億2千3百4十5万円。
小指は切り落とされて、
鼓膜は爆竹で破られて、
何度も犯されて、
犯人グループは警官に囲まれて自殺して、
ほとんど透明にまで薄められた希望を飲み干すと、
ひどく苦い味がして、
たまらず女の子は、
使い古された異国の魔法の言葉を口にすると、
目を閉じた。
ハレルヤ、グロリア。

遠くで鐘の音がした。
101人の子供たちの体が、少しずつ浮き始めた。
1人ずつ、1人ずつ。
東京、五反田の上空のヘリから、
極彩色の花びらがばらまかれた。
言い尽くされた呪文。
ハレルヤ。
自転車のペダルのきしむ音。
グロリア。
雨の匂い。
ハレルヤ。
目の前で子供たちの体が浮かび上がる。
グロリア。
空から花びらが落ちてくる。
ハレルヤ。
やがて忘れられてしまうであろう地上の乾いた悲しい出来事。
グロリア。
流刑地より、愛をこめて。

東京、五反田、ヘリの音、
それに向かって子どもたちは浮かび続ける。
16センチから17センチへ、
17センチから18センチへ、
18センチから19センチへ、
19センチから20センチへ、
20センチから21センチへ。

その21番目の戦地へ向けて、
流刑地から飛び立つ子供たちの、
音のない心臓の音色が、
ヘリを墜落させる。

その音が鐘のように響き渡る、
からーん。
これは流刑地からの音だ。
からーん。
ハレルヤ、グロリア。
異国の魔法の言葉を口ずさむ。
ハレルヤ、グロリア。

流刑地より、愛をこめて。